同窓会会長挨拶
同窓会会長 佐藤 澄男
令和元年8月4日就任

―令和の困難を乗り越えて新しい時代を創ろう―

 

 令和2年の始めから、中国武漢に由来する「新型コロナウィルス感染症」なるものが世界を席巻し、多数の犠牲を払いました。マスクの着用、手洗いの励行など、改めて衛生環境を整える重要性を認識させられ、集会の制限などによるコミュニティの分断は、社会生活に大きな影響を与えるものとなりました。この3月に卒業された皆さんは、入学そのものが6月に繰り延べされるというハンディキャップからのスタートでした。昨年夏の甲子園を制した仙台育英高校・須江監督の言葉を借りれば「青春とは密」なるもので、それを突き破るたくましさがもたらした快挙であったと思いますし、本校の活動においても、数々のドラマがあったのであります。

 あれから3年。ようやくマスクなし、各種大会での声出し応援が解禁され、従前の活動に戻りつつあります。それを象徴するWBC侍ジャパンの活躍でありました。勝負の世界は筋書きのないドラマと言われていますが、まさにすごいものを見せてもらいました。決勝戦9回表の二刀流・大谷翔平選手と米国主将にして最強打者マイク・トラウト選手との対決。

 大谷渾身のスライダーにトラウトのバットが空を切る。

 日本優勝のとき、勝利に酔いしれながら、諦めていたものが現実となるという瞬間に感動を覚えたのは私だけではないと思います。

 同窓生という身近なところでは、新十両「時疾風関」の誕生物語も。

 平成27年度総合学科卒冨栄秀喜君がその人であります。東京農大を経て時津風部屋に入門。令和元年5月場所、時栄の四股名で初土俵。翌7月場所で序二段を7戦全勝で制し、三段目をひと場所で通過し幕下へ上がります。ここから四場所連続勝ち越しで上位に進出。いよいよ十両が近いと思われましたが、ケガに見舞われ、負け越し、途中休場も経験しました。雌伏の時を送るも令和4年3月場所に名を「時疾風」と改め、じりじりと番付をあげて十枚目以内に定着。それにしてもこの位置は新進若手と十両からこぼれてきたベテラン、中には幕内経験者もいるというまさに群雄割拠の超激戦区であります。あと一歩のところで昇進を逃し悔し涙を飲みながら東幕下三枚目で迎えた先の大阪三月場所。テレビ桟敷から連日応援致しました。ところが、好調だった一月場所(5勝2敗)から一転、得意の左差し右上手の形になかなか持ち込めず苦戦。3勝3敗で迎えた相手は十両・栃武蔵。立ち会い鋭く左を差し、右上手から出し投げて崩し寄り切り。最後の最後に自分の型を出して勝ち越し、場所後の番付編成会議を待つことに。3月29日十両昇進の吉報が届き、万歳!万歳!今場所のみならず大相撲挑戦から丸4年。序列厳しい大相撲界にあって、十両は「関取」と呼ばれる特別な席であり、正に「夢」をつかんだのです。

 このことは明治21年開校の小牛田農林高校135年の歴史上初の快挙であり、長く関取の座に居る事は無論のこと、更に上の幕内を目指して精進してもらう事を期待します。その意味で、土俵入りの際に付ける「化粧まわし」を贈るべく準備を始めました。紫地に金色の校章「菱田に稲」を配する図柄で発注しております。夏場所からの土俵入りをお楽しみに!

 長かったコロナに翻弄された令和の始まり。しかし、紹介した「WBC優勝」「時疾風十両昇進」に見る通り、身近なところで明るい話題に接する事が多くなってきたことは、大きな喜びであり希望です。困難を乗り越えて、新しい時代を創って行きましょう。

 

令和5年4月15日